レトリーバーから

めっちゃ短い短編小説。
好奇心で一人暮らしを始めた青年が、
毎日のむなしさに気づいて、実家に帰ろう!みたいに思ったんですね(笑
こういう人、本当に世の中にいるんですよね、きっと。
「月のいと明きに」

夜道。両側に住宅がたくさん並んでいて、なんだか狭く感じる。
思わず、やっぱり北海道とは違うんだなって思ってしまう。
一ヶ月前に越してきたアパート。立地条件もそれなりだし、
大家さんもいい人だ。

だけど、確実に何か足りなかった。自分の中でもどかしさを感じた。
寒い冬の風に当たり、思わず肩をすくめる。
親父が営んでいる蕎麦屋を継ぎもせずに、
お袋が進めた大学にも行かずに、
俺は何をしてるんだろう。何をしたいんだろう。

幸い、友達が何人かこの町に住んでいて、たまに会っては
適当に街をブラついたりして遊んでいる。
一人のときは、テレビを観たり、音楽を聴いたり、バイトに行ったりする。

「一人暮らしがしてみたい。」
そんなふぬけた事を抜かして、俺は家をでてきた。
毎日好き放題に遊べて、これ以上のことはない。
ただ―――自分が、これからどうなっていくかが不安で。
ほら、最近よく言うだろ?ニートってやつ。
自分もそれっぽく(バイトはしてるけど)なってきたしさ。
なんか、不安なんだ。よくわかんないけど。

コーラの缶を蹴飛ばす。それが、電柱に当たって跳ね返る。
跳ね返る瞬間に僅かだけど、月光が反射した。
随分と明るい。太陽みたいな明るさだ。
自分の影を眺めると、結構長いんだなって思ったり。

とりあえず、今日は帰ろう。それから、明日実家に電話しよう。
「家族でくらしてみたいんだ」って。

END
月のいと明きに